少女劇団いとをかしの感想

少女劇団いとをかし第一回公演を終えて≫
とあるスタダスタッフの方の得意文句
「それはあなたの意見でしょ?」
"あなたの意見"から見える商業の可能性は消費者の意見だから答えと同一
多くの"あなたの意見"が一致したときそれは世間の意見になる
「それはあなたの意見でしょ?」
私はスターダストが大好きだから運営に恥を欠かせないためにも"あなたの意見"で私の感想と私の解釈を全力で綴っていきたいと思います


先ず始めに2年ほど前からここのブログやツイッターmixiなどで書いたり、周囲にもずっと言い続けてた事
「アイドルばかり企画してもアイドル志望じゃない子は活動のチャンスが与えられないまま宝が腐って辞めていくだけになるから女優志望で演劇部作ればいいのに」
一つの夢が叶ったような企画が少女劇団いとをかしでありとても楽しみにしてました
チケットは1つしか当たりませんでしたが何とか友人の手を借りて4公演見る事が出来ました


≪会場≫
会場の川崎市アートセンターのキャパは200
小田急線で新宿から新百合ヶ丘駅まで急行で20分程度でそんなに遠くは無い
最近はKAGAJOの影響もあり神奈川県寄りのファンも増えたので藤沢、江ノ島周辺のファンには近くて良いですね
座席のスペースはそこそこ広くて窮屈せずどの席からもステージが見えるのも良かったです
会場費は非常に安くローリスクで開催が可能
舞台は広くて色々な仕掛けも可能でこの規模のミュージカルに絶好の場所だと思いました
あえて苦言を言うならば3階の一般の方も自由に利用出来る公共のフリースペースでスタッフがテーブル二つを独占して仕事していた事ですかね
仮に会場に許可を取っていたとしても一般の方も利用しているのですから仕事は仕事で1Fの楽屋の横に多目的ルームがあるのでそちらを利用して欲しかったです
いとをかしファンとしてスタッフさんの行動が恥ずかしかったです笑


≪キャスト≫
脚本演出は近藤キネオさん
エビ中がCDリリースしたあとの中期〜後期からスターダストで名前が上がるようになった新人の一人
それに対して出演メンバーは芸能界を目指す子たちが夢見るスターダストプロモーションに所属している"精鋭揃い"の女の子集団
大人と子供とはいえ"プロ"と"天才"では電器屋さんの店長とエジソンくらい人を魅了する力に差がありますが、やはりそこはプロの腕の見せ所なので陳列から広告などいかに売れるか頑張って欲しいところ笑
そんな近藤さんの脚本演出は予想も出来ない実に興味深い内容でした


≪笑いと拍手をさせない演出≫
4回の公演を通して笑いや拍手、手拍子が非常に少なかったです
他のどの舞台でもミュージカルでも笑える脚本の部分には笑える演出を全体の空気作りとして観客に肌で伝える事が普通です
だから他の一般的な舞台、ミュージカルでは"初見"であっても自然と笑いが起き自然と拍手が起きる事が常識です
これがプロの演出家の仕事です
しかし今回は観客が「笑っていいのかな?」「拍手してもいいのかな?」と迷ってしまうような空気が漂っていて観客の大半から終演後にそのような話が出ました
これは私の経験した事が無い"観客に判断を委ねて悩ませる空気作り"が演出されていて非常に新鮮でした
人がやらない事にあえてチャレンジすると言う姿勢は僕は大好きです
どっちつかずの謎の空気を作ると言う一見デメリットに見える事ですが、プロである近藤キネオさんに何らかの思惑があったんだと思います
残念ながら私は凡人なので最後までその意味に気付く事は出来ませんでしたが笑


【これが狙いだった場合の七不思議】
メンバーが観客を盛り上げようと煽る場面が何度もありました
近藤さんが作り上げた空気を破ってそれに観客が答えてしまう場面が多々見受けられました
これはチグハグでなんとも不思議な時間でした
メンバーが間違った演技をしたのか、もしかしたら空気を破ってまでメンバーが盛り上げると言う一連の流れが近藤さんの指示した演出だったのかもしれません


【これが狙いでなかった場合の結果】
演出が下手くそだと言うファンの方が多いので擁護ではないですが私は近藤さんに味方します
近藤さんはプロです
笑ってくれていいのに笑いの間を与えないプロの演出家がどこにいますか??
ここは中学生が作った演劇発表会ではないです
新時代のミュージカルを絶対に狙っての演出である事は間違い有りません
人を笑い者にする人は嫌いです
これが狙いでなかった場合なんてありえませんので考えるだけ無駄です


≪泣かせない演出≫
今までに舞台は100回くらいしか見ていない素人の私ですが、"死"を連想させる事で客席に涙を誘う演出はその少ない経験の中でも数多く見てきました
今回もその一つで良い意味で"安易"に泣かせてくるなぁと思ったのも束の間、
近藤さんの泣かせない脚本演出には驚きました
最近の安い演出の舞台では安い涙をたくさん見てきてウンザリしていたのは事実です
とは言えせっかくの泣けるチャンスに泣かせる演出へ持っていかない事に何の意図があるのか凡人の私には最後まで理解出来ませんでしたが、プロである近藤さんに何らかの狙いがあったのは確実です
笑ってはいけない演出の中で一見稚拙に見えて笑ってしまいそうになりながらも泣かせない演出を見させて頂き大変勉強になりました


≪情緒不安定なクラス≫
舞台を見た方ならみなさんが思ったはず
半分のメンバーのキャラが定まっていなく発言や行動に多くのキャラ矛盾が生じていました
そのキャラはそんな発言しないでしょとか、あのキャラはあんな行動しないだろとか
私なりにこれを受け止めるならば中学生が設定ですし"中二病"を見せたかったのではないだろうかと勝手に解釈しました
おかしな事ばかりでしたが特に私が感じた事は最後の方の長城祝華さん演じる河津英恵さんが永坂真心さん円実五十畑あこさんに攻めるシーンは設定こそが独り善がりのむちゃくちゃで斬新でした
クラスの全員が悪い部分での"女性脳"を発揮させた時にあーいうシーンが生まれるんだろうなと思いました
あまりにも稚拙な脚本に疑問視するお客さんがたくさんいましたが、中二病の演出であれば納得出来ますね
中学生が主役となる作品であればこのようなあえてチグハグな脚本は選択肢の一つに入れても良いと思いました


≪謎の場面転換≫
今回の舞台で不評だった下手な転換のやり方
確かに場面と場面の繋ぎは中学生の学芸会レベルで過去に見た舞台の中でも一番酷かったですね
でもこれにも近藤キネオさんの狙いがあったはずです
四公演見て私が思うこうだったんじゃないかと言う"仮説"を並べたいと思います
何が答えかは分かりませんがプロの演出家の真意はなんだったのかいつか知りたい所ですね
1、中学の文化祭の演劇部が舞台なので転換も中学生レベルに合わせた説
2、演出家の何らかの狙いにより転換をわざと下手に見せる事で今回の舞台に感情移入させないようにしていた説(笑い、拍手、涙が自然発生しにくい雰囲気を作り出した事とも一致する)
3、第二公演に繋がる裏設定があった説(例:繋がっているようだけど実はパワレルワールドで転換毎に全て別の世界の話。それは第二公演以降に明かされる)


≪キャラの個性を伸ばさない演出≫
個々のメンバーを応援していた人には特に思ったであろう出来事
それはメンバーの光る個性をあえて伸ばさなかった事
実例で言えば7月のインプロで鮫島彩華さんが台本の無いたった1分の中の自由に発した言葉である「アーイースー!」の3文字だけで大爆笑を取りました
それも5回くらいアイスのテンドンを繰り返し次にアイスと言う言葉が出るのを分かっているのに、いやアイスと言ってくれるのを観客が待っているかのように何度言っても全てが爆笑でした
これは鮫島さんが演出にとらわれず自分自身で笑える空気を作って観客を魅了した瞬間です


しかし少女劇団いとをかしでは2時間あるにも関わらず「アイスの3文字」を超える笑いは一度もありませんでした
完全に鮫島さんの個性が抑え付けられた演出だったからです
ファンならば個性を知っているからキネオさんが関わらない方が面白いんじゃないかって思ってしまうのは当然ですが、それでも私は近藤キネオさんに味方します
鮫島さんだけではなくメンバー全員に言える事として今回は"出る杭を打つ"演出が非常に多かったです
例えば歌やダンス、演技力、キャラ、経験値、パーフォーマンス力、エンターテイメント力などメンバーの育った環境がバラバラであるため全員が同じくらいの実力ではなく、目で見て分かるそれぞれの分野で得意不得意の実力差がありました


そこで私が考える仮説がキネオさんによる「狙って出る杭を打った」説です
得意分野でわざと個性を発揮させない事により誰もが一定以上目立たなくしたのではと考えます
何故そんなことをする必要があるのか
それは全員平等にチャンスを与えたかったからではないでしょうか
物語を通して100%主役と言える子がいませんでした
満遍なくみんなにセリフがありました
歌もうまい具合にバラけています
普通の舞台やミュージカルではそのようなことはあまり見られません
実力を発揮しては行けない
目立つ子がいてはいけない
となればそれは演出脚本のキネオさんの腕の見せ所
多少なりとも得な役、損な役は舞台ですから仕方無いですが
全体を通してあからさまな差は付いていませんでした
出る杭を打つ、個性を潰す、魅力を出させない
これらは全てキネオさんの"優しさ"なんじゃないかと仮説を立ててみました
出る杭を打ち、出ない杭と高さを合わせる
これなら演者が平等に活躍出来てバランスの良いステージになりますからね


≪総括≫
私が今回の脚本演出を担当するならば、お客様に分かりやすく笑いの間を作り、ほろっと涙してしまうシーンを取り入れて、拍手や手拍子が自発的に起きる空気作りをし、メンバーの個性を伸ばし活かし今出来る事の120%を魅せる事を重要視するでしょう
しかしそれではそこらへんの一般的な商業舞台と一緒になってしまうかもしれません
ツイッターや現場の声で一目瞭然ですが、今回は近藤さんに対して批判的な意見が圧倒的に多かったです
これは逆に考えれば他とは違う作品になったと言う事です
人は弱いから批判されたくない、嫌われたくない生き物です
だからこのような作品作りはやろうと思っても中々出来る事ではありません
それを近藤キネオさんはパンフレットの写真に現れているように自信を持って堂々とやってのけました
「この舞台を通して何を伝えたかったのか」
と言う大事な部分は私には届きませんでしたが、それはきっと私が未熟だからでしょう
いつかこの作品の存在意義に気付ける日が来るよう日々精進していきたいと思います







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